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 ドラキュラ伝説の起源ともなった、ルーマニアはトランシルヴァニアの
ヴラド3世。通称ツェペシュ(串刺し)公。悪魔と揶揄され酷刑を好んだ
残虐な伯爵として数々の伝説を残した人ですが、近代では苛烈ともあれ実
のある政略でオスマン帝国の侵攻から故国を救った英雄として見直される
風潮も起こっています。彼が通常最も重罪の者に課せられるはずの串刺し
刑を好んだのは、西洋に例のない凄惨な進撃を見せるオスマン・トルコへ
の威圧行為としての一つの手段であったとの見方もあります。ルーマニア
に防衛ラインをしく。それは恐怖という障壁であり、その異常とも言える
恐怖は、豊穣穏やかな土地柄を囲み、外敵から身を守ったのではないか。
とも、推察が可能になります。偏見を顧みず、串刺し公ヴラド3世を愛の
人と見立てて、この物語は描かれます。親子3代に渡る偏屈な愛の遍歴を、
史実を脚色し童話の域に到達させたところに、深煎りコーヒーの芳醇さを
加えたような物語。軸となるのは串刺し棒(ツェペシュ・スティック)、
その愚かしくも激しい愛は残酷にも肢体に突き刺さり臓器を圧し続ける。
ありとあらゆる怪、奇、華を絞り出し、切なさを描き出します。
どうか愉しんでいただけますよう。

脚本・演出 宇野 正玖